ALS:筋萎縮性側索硬化症ってどんな病気?

「ALS」という病名を聞いて、どんな病気か思いあたる人は少ないでしょう。ALSは、脳や末梢神経からの命令を筋肉に伝える運動ニューロン(運動神経細胞)が侵される病気で、難病の一つに指定されています。2016年の統計では、日本に約9,600人の患者さんがいると考えられており、原因究明の研究が多くの研究者によって進められています。では、ALSとは一体どんな病気なのか、くわしく見てみましょう。

からだのどこが悪くなるの?


人間の手や足、顔など、自分の思いどおりにからだを動かすときに必要な筋肉を随意筋といい、随意筋を支配する神経を運動ニューロンといいます。「ニューロン」というのは「神経細胞」のことです。
運動ニューロンは、歩いたり、物を持ち上げたり、飲み込んだりするなど、いろいろな動作をするときに、脳の命令を筋肉に伝える役目をしています。
この運動ニューロンが侵されると、筋肉を動かそうとする信号が伝わらなくなり、筋肉を動かしにくくなったり、筋肉がやせ細ってきます。ALSはこの運動ニューロンが侵される病気です。

正常な運動ニューロンと筋肉・ALS患者の運動ニューロンと筋肉

感覚や自律神経はどうなるの?




    ALSでは運動ニューロンは侵されますが、知覚神経や自律神経は侵されないので、五感(視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚)、記憶、知性を司る神経には原則として障害はみられません。あなたがだれかに皮膚をつねられたとき、痛いと感じ、つねられた手をひっこめるでしょう。痛いと感じるのは「知覚神経」、手をひっこめるのは「運動ニューロン」の働きです。ALSになると痛いという感覚はありますが、手をひっこめることができなくなります。
    ALSで侵されるのは、随意運動を行う筋肉(随意筋)を支配する運動ニューロンです。随意運動とは、手を上げるなど自分の思いどおりにからだを動かす働きのことです。心臓や消化器も筋肉でできていますが、随意筋ではありません。心臓が動き、胃や腸で食べ物が消化されるのは無意識に自動的に働いており、これを支配しているのが「自律神経」です。ALSでは自律神経は侵されないので、心臓や消化器の働きには影響がありません。
    しかし呼吸は、自律神経と随意筋である呼吸筋の両方が関係するので、ALSで運動ニューロンが侵されると、呼吸筋が次第に弱くなって呼吸が困難になります。

人間の神経を働きで分類すると

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