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コミュニケーション障害

ALS患者さんは、舌やのどの筋肉の力が弱まり、ことばを発しにくくなります。この時はほとんどの患者さんは嚥下の障害を伴ってきます。また手足の運動麻痺が進むと、筆談やジェスチャーなど会話以外の手段による意思疎通も難しくなっていきます。この状態をコミュニケーション障害といいます。

ここでは、文字盤やスイッチなどの代替手段を使って、患者さんとご家族・介護者など周囲の人とのコミュニケーションを維持する工夫について、さらにパソコンなどを活用して離れた場所にいる人と交流する手段についてもご紹介します。

最適なコミュニケーションの手段は、患者さんごとに異なり、障害の段階によっても、時に速いスピードをもって変化していくため、主治医の先生や理学療法士などの専門家に相談することが大切です。

また、症状が軽い早期の段階から常に1歩先の準備をして、患者さんと周囲との信頼関係を作っておくことが理想的です。なぜならば、使用準備ができた時には症状が進行して使えないことがよく起こるためです。障害が進行したときに、新たなコミュニケーション手段を検討しやすくなりますし、重度のコミュニケーション障害※1になっても心の交流を保てる可能性につながるからです。

必要な機器の購入や修理については、公的援助が受けられる制度がありますので、お住まいの市区町村の窓口に問い合わせましょう。

※1:人工呼吸器を導入した患者さんの一部は、長期療養の結果、周囲とのコミュニケーションがきわめてとりにくい状態になることがあります。眼球運動など、自分の意志による動き(随意運動)がわずかでもできる状態を「最小限のコミュニケーション状態(minimal communication state:MCS)」、すべての随意運動ができなくなった状態を「完全な閉じ込め状態(totally locked-in state:TLS)」といいます。

うまく会話ができなくなったとき

うまく会話ができなくなり、筆談も難しくなったときは、文字盤をはじめとする代替手段を用いて、患者さんと周囲のコミュニケーションを維持する工夫をしましょう。

文字盤を使う

文字盤は、それぞれの患者さんに合ったものを簡単に自作でき、特別な機器を使用しないため、場所や設備を選ばず活用できて便利です。

手や足の指が動かせれば、文字盤に書かれた文字や数字を指し示して、意思を伝えることができ、キーやタッチパネルで入力した文字を音声にする音声合成装置も使えます。これらは「声の出る文字盤」といえる道具で、手軽に持ち運ぶことができます。

手足が動かなくなっても眼球が動けば、透明文字盤を使って意思を伝えることが可能です。ただし、患者さんと介護者の両者にある程度の練習が必要なので、会話がしにくくなってきたら、早めに始めるとよいでしょう。

手すりの取り付け

透明文字盤の使い方

患者さんと読み手の間に透明文字盤をかざします。

読み手は、互いの視線と文字が一直線になるように文字盤を動かします。

手すりの取り付け

該当しそうな文字を読み上げるか指差して、患者さんの合図※2で特定します。

手すりの取り付け

※2:まばたきの回数や程度でYES/NOを決めておくと便利です。

透明文字盤の作り方、使い方についての詳細はこちら

「都立神経病院 リハビリテーション科 透明文字盤コーナー」

カードやボードを使う

排便・排尿、のどの渇き、暑さ・寒さ、からだの痛み、テレビ・ラジオのON/OFFなど、日常生活でひんぱんに訴える事柄をカードやボードに書き留めておき、指差しや合図で示して伝える方法があります。

要求する内容は、患者さんごとに異なり、また障害の進行や季節によっても変わるので、状況に合わせて作り直す必要があります。

浴室の工夫

その他のコミュニケーション手段

患者さんの口の形から言いたいことを読み取る“口[くち]ぱく”は、表情やジェスチャーと組み合わせて多く用いられます。介護者の手のひらやシーツ、空中、床などに文字を書くようにする空書[くうしょ]も、補助的な方法として役立ちます。

ただし、これらのコミュニケーション手段は、患者さんと読み手の信頼関係ができていないとうまくいかないこともあります。わかりにくい場合は、口ぱくと文字盤を組み合わせるなど、複数の方法を併用すると伝わりやすくなります。